越谷市議会議員 きくち貴光
 
 

■議会報告

 

●平成27年12月定例議会

○行政調査報告


 議長のご指名によりまして、行政調査を行いました白川秀嗣議員、辻 浩司議員、山田裕子議員を代表いたしまして、私からその概要をご報告申し上げます。
 調査は、去る10月21日、22日、23日の3日間にわたり、「地域住民とつくる病院・医療」、「シティズンシップ教育」、「福祉ゴミ処理プロジェクト」の3項目を調査事項とし、愛知県名古屋市にある南医療生活協同組合、京都府八幡市、大阪府豊中市への行政調査を実施しました。
 まず、南医療生活協同組合において、「地域住民とつくる病院・医療」について運営を行っている南生協病院の取り組みを調査いたしました。南生協病院は、組合員約7万6,000人で組織する南医療生活協同組合によって設立された病院で、病院の建設に向けた準備過程から専任会議と呼ばれるミーティングを数多く重ねながら、どのような病院が自分たちに必要なのか、組合員が議論をしながらつくり上げた病院です。病院内には、外来や入院病棟、地域包括ケアの拠点となる訪問医療、介護、看護ステーションが設置されているほか、組合員のアイデアで図書室、フィットネスクラブといった施設も併設されており、明るい空間となっていました。
 こういった病院づくりの背景には、南医療生活協同組合が長年地域に密着して築き上げてきた活動実績があります。単に一民間病院ということを越えて、健康寿命を延ばす取り組みの一環として、公園でのタオル体操、お互いさまシートと呼ばれるメニュー表を媒介にした地域の支え合いの仕組みづくり、空き家などを活用した地域の福祉拠点づくりなど、一般の市民への裾野の広がりを含めた組合員の熱心な地域活動の上に南医療生活協同組合の活動が成り立っており、これらの活動はドキュメンタリー映画「だんらん にっぽん」として全国で上映もされています。超高齢社会でも自分たちの地域に必要な医療や介護のサービスは自分たちでつくり上げるという住民主体の取り組みは、大いに参考となりました。
 次に、八幡市において、「シティズンシップ教育」について調査いたしました。八幡市では、以前から小中学校の授業に市独自の教科である八幡市民の時間を導入しています。これは、豊かな市民力、しなやかな身体力の育成を目指し、各学年10時間、小中9年間の系統的なコアプログラムに合わせたものです。これに各教科、道徳、総合的な学習の時間を横断的に関連させたサブプログラムを通して、市民意識の育成に取り組んでいます。
 また、八幡市で言う人間力を高める事例として、八幡市子ども会議があります。ことしで11年目を迎えるとのことですが、毎年市内小中学生各学校2名ずつの24名と高校生8名の32名が4班に分かれて市内を調査し、まちづくりへの施策を市長に提言しています。提言は多岐にわたり、学校給食に地元の特産物を使用する。ハザードマップを小学校単位で作成する。それをハンカチに印刷して持参し、子供でもわかるようにする。電柱に浸水時の目印の看板を取りつけるなどを市長に提言し、市長もこれを受けて実際の施策に生かしているとのことでした。その中には、実際に100万円の予算で何ができるか調査、提案するなど、これらの取り組み自身がまさに「シティズンシップ教育」であり、主権者としての責任や役割を自然と身につけていく好例であると感じました。
 最後に、豊中市において「福祉ゴミ処理プロジェクト」について調査いたしました。「福祉ゴミ処理プロジェクト」は、高齢や障がい、病気など経済的、身体的、精神的な理由で自力によるごみ処理が困難なため、生活スペースの確保が困難な世帯に対して、民間の福祉団体や市の職員、市民ボランティアが一体となってごみ処理を支援する取り組みです。平成17年にプロジェクト会議が立ち上がってから、10年で約350件の解決事例があります。特徴としては、行政主体ではなく、社会福祉協議会や自治会、地域住民のボランティアによりごみ処理を行うことで、孤立しがちな住民と地域との関係性が生まれ、ごみ処理後の暮らしも地域で見守ることができる点が挙げられます。
 また、豊中市では、コミュニティソーシャルワーカー、CSWの配置など、地域福祉に力を入れています。現在14名いるCSWは、行政と住民をつなぐ重要な役目を果たし、制度のはざまにある支援の手が届きにくい人々へ地域住民とともに支援を展開し、排除型から包摂型の社会への転換を目指し、活動しています。これらの取り組みは、NHKドラマ「サイレント・プア」として放映されました。制度のはざまで苦しみ、なかなか声を上げられない人々の姿は、日本社会が抱える社会的孤立の象徴的な問題として提起されました。本市でも生活困窮者自立支援制度がスタートした今、ライフセーフティーネットの取り組みを公民協働でさらに進めていく必要性を感じました。
 以上が今回の行政調査の概要でありますが、全体を通して貴重なお話を伺うことができました。今後はこのことを議会及び市政の中で生かしていきたいと考えています。以上で報告を終わります。


 
 
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