越谷市議会議員 きくち貴光
 
 

■鷹隠書屋(コラム)

政治や経済・文化・歴史などさまざまな事柄について、きくち貴光の考えや想いを随時載せます。なお、「鷹隠(よういん)」とは、きくち貴光の号です。

 

 

■公共施設の維持・管理・更新について

 全国の自治体で問題になっているのが、「公共施設の維持・管理・更新」である。2020年の東京オリンピック開催が決定をしたが、都市インフラの多くは、1964年の東京オリンピックの開催に間に合わせるように整備が始まりその後の高度経済成長期に整備がされ続けていった。これらの施設の更新時期が順次訪れようとしている。
 鉄骨造りやコンクリート製の建造物などは、かつては半永久的に使えるものと受け取られていた。実際の耐用年数としては、途中で手を加えることによって100年近く使用できる場合もあるが、現実的には減価償却の考えにもよるため50年から60年といったところである。人の一生と比較をすれば確かに半永久的と言えないこともない。しかし、ある時期にくればいずれにせよ使用に耐えられなくなる。
 いま、そういった社会資本・公共施設・公共インフラの維持・管理・更新を順次行わなければならないが、それには莫大な予算が必要になる。単純にいえば、いまあるものを作り直すのには、これまでかけてきた費用分の資金がそっくり必要である。しかし、高度経済成長やバブル時代のように右肩上がりで税収が伸びてきていた時代は終わり、税収が伸び悩む現状の中では、同時に超高齢化社会への突入による社会保障関連予算が雪だるま式に増え続ける中では、もはやかつてのようにあてられる予算はない。
 公共施設の維持管理更新には、一般的には建物の高さや数ではなく床面積で考えるのが一般的であるが、この越谷市の現状でいえば、市内にあるさまざまな公共施設、市役所の庁舎や地区センター、消防、学校などの施設の床面積の合計は約57万3000㎡ある。このうちの約28万8000㎡は築30年以上となっている。施設の更新費用には諸説あるが、1㎡あたり約35万円程度かかると想定されているのでこれを掛け合わせると約1008億円となる。建物の耐用年数を50年とすれば今後20年以内に1000億円程度の予算をかけて更新を行なっていく必要に迫られることになる。1年あたりでは約50億円。現状の越谷市の財政事情からすればかなり厳しい数字である。ただし、これは「同じ場所に」「同じ機能で」「同じ大きさで」建て替えていった場合である。
 公共施設のニーズとはどのようなものに依拠するか。元になるのは人口である。越谷市も平成24年12月に人口が33万人に到達した。市の推計では平成35年ごろに人口のピークを迎えるとしている。その時点での人口は34万1000人であるが、なお1万人増えるのを見越して公共施設を作り続けるのが正しいのか、それともその後に来る人口減少を見越して施設の再配置などを検討した中で整備し直すべきか、いずれが正しいだろうか。
 また、築30年以上の公共施設の床面積はさきほど述べた通り約28万8000㎡であるが、そのうち学校の校舎・体育館が約21万9000㎡、実に全体の約76%を占める。今後の少子化にあって、「同じ場所に」「同じ機能で」「同じ大きさで」で学校施設を建て替えるのが現実的であるか。
 いずれにせよ、施設の利用者・受益者は市民であるが、同時に施設整備のための費用を負担するのも納税者である市民である。施設整備にあたっては、単に利便性を高めるためだけで考えるのではなく同時に将来の負担についてもきちんと市民と情報を共有し、地域社会が持続的に発展出来るようにしていく必要がある。
 現在越谷市では、以前議会で提言を行なった公共施設マネジメント白書の作成にとりかかっている。しかし単に白書を作ればそれで物事が進むということではない。実際には1つ1つの施設を利用している市民との対話の中で今後のあるべき姿を議論していかなければならない。あるいは自宅から10分の施設は廃止し自宅から20分のところの施設を利用しなければならない、限られた予算の中ではそういった再整備も当然起こり得る。その不便さも納得をしてもらわなければならない。
 その意味からも公共施設の維持管理更新には、市民との情報共有と対話が重要である。

(2013年12月31日)

 

 
 
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