越谷市議会議員 きくち貴光
 
 

■鷹隠書屋(コラム)

政治や経済・文化・歴史などさまざまな事柄について、きくち貴光の考えや想いを随時載せます。なお、「鷹隠(よういん)」とは、きくち貴光の号です。

 

 

■中東問題

 中東が大きく揺らいでいる。さまざまな手法を用いて和平への道を模索しているが、決して解決されることがない。その原因は宗教の違いに基づくものである。日本人に生まれて日本に住んでいると、宗教というものは混合された状態であるので、非常に理解が難しい。

 中東には大きく3つの宗教勢力が存在している。古い順からユダヤ教、キリスト教、イスラム教である。それぞれ唯一絶対の神を信奉しており、異教徒は邪神を崇拝しているとして攻撃をするが、実は三宗教とも同じ絶対者を信奉しているのである。つまり、キリスト教はユダヤ教から別れ、イスラム教はユダヤ教、キリスト教の教義を取り入れているからである。現在ではさらにそれぞれの内部でも複数の流派に分かれてもいる。

 日本人には理解に苦しむが、同じものを信奉しながら、教えに対する理解の仕方、つまり信仰のあり方や、あるいは教えそのものの解釈の仕方が異なることから、互いに互いの存在を認めることができないのである。このことは相手を理解するという寛容の精神があるか否かとは別の次元の話のようである。

 とはいうものの、歴史的に見て、長年に渡り三者が対立を続けてきた訳ではない。税を余分に納めれば、信仰そのものは許された時代もあるし、相手の宗教に理解を示した王もまた存在したのである。時には戦争に勝利するために手を組んだ例、それもいろいろな組み合わせ、そういったこともあった。

 現在の混沌とした状態となったのはおおよそ20世紀に入ってからのことである。特に第一次世界大戦のさなか、当時中東を支配していたオスマントルコ帝国(ドイツ側で参戦)を、イギリスが打倒するために使ったさまざまな外交術が問題を大きくしている。その外交術とは、アラブ人には独立を約束し、ユダヤ人には国家の建設を認め、フランスとは2カ国で領土を分割しようという、同じ土地をめぐって3つの手形を発行したことである。

 実際の支配状態は別にして、その手形を理由に多くのユダヤ人がヨーロッパ各地から移住を始めた。さまざまな規制が設けられたものの、特にナチスドイツが迫害を始めてからは急増し、それ以前からその地に住んでいたアラブ人の一派であるパレスチナ人よりも急速に増えだした。結果として第二次世界大戦ののちこの地にイスラエルが建国された。

 それ以降現在までにイスラエルと周辺国との間で4回にわたって本格的な戦争が行われた。そうでない時でも、常にイスラエルを中心に、隣り合うパレスチナやレバノンなどの地で、軍隊同士が戦闘を行ない、住民同士が衝突をし、あるいは軍隊が相手側の住民に危害を加えるなど、常に生命を危険にさらす状態が続いている。

 どちらが正しくてどちらが間違っているということではないが、しかし不安におののく住民が多数存在するということ自体が誤りである。寛容の精神を持ち、相手の存在を認め、矛を納めて、互いに共存できる平和な社会を一日も早く実現してもらいたいと思う。

(2006年7月19日)

 

 
 
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