越谷市議会議員 きくち貴光
 
 

■鷹隠書屋(コラム)

政治や経済・文化・歴史などさまざまな事柄について、きくち貴光の考えや想いを随時載せます。なお、「鷹隠(よういん)」とは、きくち貴光の号です。

 

 

■年金について

 現在、大きな問題となっているのが年金である。その問題とは「今納めている年金を、将来本当にもらうことが出来るのかどうか」である。その将来の不安は、若者を中心に広がっており、2002年度の納付率は62.8%。つまり4割が未納の状態となっている。

 年金問題を深刻化している一番の要因は出生率の低下である。国民年金は、現役世代が高齢者を支える「世代間の仕送り」(賦課方式)である。これは納付する人数が変化すると、その負担の度合いが異なってくる。つまり子供の数が減ると保険料を負担する現役世代が将来は減ってゆき、年金財政は悪化するのである。
 現在の制度がスタートした1973年当時、出生率は2.1を越えていた。やがて下降傾向となり、年によっては持ち直すこともあったが、現在では1.32となっている。このまま際限なく下降を続けると思いにくいが、上昇に転じるというのも考えにくい。しかし、年金問題を論じる時、政府は出生率が将来回復するという見通しをいつも示している。ちなみに2050年には1.39に回復するという見解を持っている。

 将来の見通しはともかく、現状はどうか。2002年度の年金収支は17年ぶりに赤字が発生した。その382億円の赤字は、9兆9000億円ある積立金の一部を取り崩し、補填したという。その内容は、実質支出が3兆5834億円で前年度比2.7%増。年金受給者数は98万人増の2122万人。一方の実質収入は3兆5453億円で前年度比2%減。このうち保険料収入は1兆8958億円で580億円減少し、運用収入も株式市況の低迷で1897億円と366億円減少。その結果、382億円の赤字となった。

 受給者は今後年90万人規模で増え続けるので、何らかの処置が取られなければ、今後も積立金の取り崩しが予想される。過去にも5回取り崩しが行なわれたことがあったが、制度改正に伴う処置であり、今回のように収支の悪化によるものではなかった。つまり、今回収支の悪化により取り崩しを行なったというのは、年金制度がほころび始めた証しである。

 今、年金について国会で論議されようとしている。社会環境が変わって出生率が上向き、諸問題が自然と解消される、そういったことが在り得ない以上、問題を先送りせず、小手先の修正や帳尻合わせでごまかすことなく、抜本的な制度改革を行なうことが必要である。その際に心がけることが2つ。1つは、現実に即して将来像を甘くしないことである。制度がほころび始めたのは常に見通しを甘くしていたからである。もう1つは、未納者を減らすための工夫をすることである。現役世代の負担によって年金が維持される以上、誰もが納得のいく制度に変えるべきであろう。
 世代を超えて、老後を安心して生活できるために、年金はあるのである。

(2004年3月31日)

 

 
 
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